魔性ノ薫リヲ感ジナガラ

まだ十年も経っていないのに、
既に忘れかけていた日々。

その扉は、
一言のキーワードが耳に届いてから、
瞬く間に思い出された。

あの冬に渡せなかったプレゼントと、
貰ってからずっと大切にしていたのに、
この旅で壊れてしまった想い出の品。

もうあの人は幸せになったのだから、
いつまで引っ張っていても仕方ない以上、
処分してしまわないとと思っていたんだ。

もう後戻りできない道を選んでしまったのだから…



そんなときに限って、
この薫りはふと私の目の前に現れてしまうからこそ、
きっと魔性の薫りなのだろう。

人はなぜ同じ薫りを嗅げば過去を想い出し、
そこに引き寄せられてしまうのか…

でも今回に限っては、
負けたときのために用意されたクッションのようで、
生き存えるための贈り物にすら感じるようになる。

神様の悪戯にまた引き込まれてしまったみたい。

これ以上一緒に居たら、
今の順序が逆転してしまう…

それでもいいの?と、
電波の届かない場所で空を見上げながら、
心の何処かで戸惑っている…



実はもう魔性の薫りの効力は無くなっていて、
気付けば自ら選んだ道にまっすぐ歩いていた。

そちらが、
真の『香り』となりつつあったことを
悟った瞬間だったのだ。

魔性も魔法も所詮はお伽話で、
心を無意識のうちにコントロールするために創られた
身を守るためのいわばシールド…

そして同時に此処まで歩いてくるために、
通らなければいけない道をきっちりと誘導してくれた
いわばナビゲーターであった。

ようやく心の底から、
『ありがとう』が言えるときが来た。

きっとそういうことなのだろう…



後戻りできない道に、
なんでそんなに心が戸惑っているのだろう?

その答えはわからないけれど、
五分五分あるかどうかすらわからないけれど、
最後の勝負に出ようと決めた。

その未来がどうあろうとも、
それが人生のような気がするから…



ほのかな香りだけを残しては、
明るくなり始めた雪の降る早朝に出発をただ見送った。

次に逢うとき、
どんな顔をして笑っていられるのだろう?

考えれば考える程に戸惑ってゆく。

あの日々がずっと続けばよかったのにと、
白夜ではない28時半の薄暗い空を見上げながら…


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